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NNNが衆議院選挙の終盤情勢を分析したところ、自民党は単独過半数を割り込む可能性が高まっています。公明党も伸び悩んでいて、与党で過半数を維持できるかはギリギリの情勢です。政権交代までいくのか、政治取材歴30年の伊佐治健報道局長が解説します。
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https://news.ntv.co.jp/category/politics/fed2a792e8b343d1a83a34b3e00aa456
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鈴江奈々キャスター
「いよいよ衆院選が2日後へと迫ってきましたが、伊佐治局長に聞きたいことはずばり、政権選択選挙ですので『政権交代までいくの?』というポイントになります」
伊佐治健報道局長
「政権交代とは簡単に言えば与野党が逆転することです。仮に自民公明の与党が過半数を割ったらどうなるかですが、今回は野党第一党の立憲民主党が一気に多数をとって政権を奪う情勢ではありません。ただ、政権交代の可能性が話題になるような選挙は久しぶりです。投票にあたっては、過去にどんなことがあったのか、その歴史を知っておくことも意味があると思います」
鈴江キャスター
「戦後、自民党が誕生してから約69年となります。そのうち自民党が政権を失ったのはわずか2回で、いかに自民党が日本の政治の真ん中にあり続けたかというのが、歴史を振り返っても分かります」
伊佐治局長
「総選挙の結果で政権が入れ替わった本格的な政権交代は15年前の民主党への政権交代ですが、注目したいのは約30年前、1993年の政権交代です。総選挙の前に今の日本政治の現状と似た時期がありました。政界の最高実力者といわれた自民党の金丸元副総裁が10億円を超える脱税の罪に問われるなど、政治と金をめぐる事件が相次いで国民の政治不信が極限まで高まりました」
鈴江キャスター
「そこで総選挙が行われ、自民党は当時の定数511の過半数を割り込むという結果になったわけです」
伊佐治局長
「それでも一番議席が多かったのは、223議席の自民党だったんです。ただ、このとき自民党・共産党以外の7党1会派が連立を組みまして多数を構成し、非自民連立政権による政権交代を果たしました」
森圭介キャスター
「自民党と公明党が連立して与党をとるという動きはまったくなかったんですか?」
伊佐治局長
「今、自民党と公明党は組んでいますが、このときはまだ、そこには至っていなくて、自民党と実際に連立を組むのは6年後の1999年ことでした」
「自民党の首相に取って代わったのは当時・日本新党の細川代表でした。細川首相は政治改革を掲げ、さっそうとしたイメージもあって政界に新風を吹き込みました。ただ、政権交代した後の日本政治は落ち着きませんでした。連立した各党は経済・外交など基本政策に食い違いがありまして、政権内は常にもめていました。私も当時、国会で取材していましたが、日付をまたいだ夜中の記者会見などドタバタが何度もありました」
鈴江キャスター
「多くの党と連立となると基本政策がなかなか一致しなくて、重要政策がなかなか進まないということが起きていたんですね」
伊佐治局長
「政策は大事ですし、人の好き嫌いも結構ありましたね」
伊佐治局長
「そんな中、翌年の春には細川首相が政治と金の問題で辞任します。さらに与党内の亀裂も深刻になりまして、社会党などが離れてしまいました。後を継いだ羽田内閣ですが、過半数に足りない『少数与党』として船出しました」
山崎誠アナウンサー
「過半数に届いていなくても、政権は成立して担っていくわけですね」
伊佐治局長
「『少数与党』は過去にもいくつか例があります。ただ政権の足元が非常に弱っていますから安定しません。結局、羽田内閣は2か月で総辞職に追い込まれ、自民党が政権に復帰しました」
森キャスター
「慌ただしいというか、状況がめまぐるしく変わったんですね」
伊佐治局長
「このころは本当に大変でした。この時期に与野党の合意で成立した選挙制度、そして政治と金をめぐる改革、実はこれが今の日本政治の骨格を形作っています。まず選挙制度ですが、1つの選挙区で1人しか当選できない小選挙区制では、候補者を誰にするか決める党本部の力が圧倒的に強くなりました。一方でその権力が強くなりすぎて、首相官邸のおごりであるとか、ゆるみも生まれました」
「そして比例代表。この選挙制度ですけれども、小選挙区で負けた候補が復活当選するといったことへの違和感が続いています」
鈴江キャスター
「現状、今もこの制度ですよね」
伊佐治局長
「もう1つは政治資金制度ですが、企業からの献金は、政治家個人には禁止されましたが、政党あるいは資金管理団体に対しては可能であって、当初からザル法などと抜け穴が指摘されていました。このとき政党助成の制度も導入され、国民1人あたり250円の税金が政党に交付金として渡される仕組みができました」
「しかし今、派閥の裏金問題を受けまして、企業団体献金や政党交付金の使い道である政策活動費の廃止の問題など、30年前の改革では積み残されていた問題が、今、あらためて問われています」
鈴江キャスター
「当時の自民党の中でも改革案が出されていたものが進まずに今に至っていることが、今また表に出ているということですね」
伊佐治局長
「もう30年たってしまったんですね。過去の政権交代の歴史を振り返ってもう一つ、今と似た場面がありました。与野党が逆転する政権交代ではないですが、自民党内の『疑似政権交代』です。20年ほど前、当時の森内閣の支持率が落ち込みまして、次の国政選挙では負けるのではという危機感が生まれました。そこに取って代わったのが小泉純一郎首相でした」
鈴江キャスター
「進次郎氏のお父さんですね」
伊佐治局長
「高い国民の支持を受けまして、この小泉氏が最大派閥を破って勝ちました。同じ自民党内であたかも政権交代が起きたかのような感覚だったんですね。これが『疑似政権交代』と呼ばれました」
鈴江キャスター
「私は当時、大学生だったんですが、政治がぐっと身近になって、自民党が新しくなったような印象を受けたのを覚えています」
伊佐治局長
「渋谷の街頭演説など大変な人だかりでした。『刷新感』といったものがすごくあったと思います。以後、自民党では時の政権の支持率が下がると、疑似政権交代で首相の顔を変えて選挙を乗り切る手法が生まれました。今回も首相の顔を変えて刷新感を演出しようと石破首相を選びましたが、これが成功するかどうかも今度の選挙の注目点であります」
忽滑谷こころアナウンサー
「今回、政権交代まではいかなくても、仮に与党が過半数を割ってしまったらどうなってしまうんですか?」
伊佐治局長
「2009年の民主党政権のように野党第一党が一気に過半数を超える情勢ではありません。一方で、自公で過半数という石破首相が示した勝敗ラインをめぐるギリギリの戦いになっています。石破首相の責任を問う声も上がりそうですが、『少数与党』による政権運営であるとか、あるいは政党同士の連携による新しい政権の形を模索する動きが出てくる可能性もあります」
鈴江キャスター
「選挙戦もいよいよ最終盤ですが、各党からは取材してどんな声が聞かれますか?」
伊佐治局長
「取材していますと、与野党の双方から選挙戦に熱気がない、冷めているといった声が上がっているというのが印象的でした。双方が投票率が下がることを気にしています。従来は、投票率が低いと組織票で優位に立っている自民党・公明党が有利なんですが、今回、自民党支持者の中に裏金問題への反発から投票に行かない人も出ている声も聞きまして、ちょっと自民党も焦っています」
鈴江キャスター
「過去の衆院選の投票率は徐々に低下傾向にありまして、前回の衆議院選挙、2021年は投票率55.93%でした。若い人、20代は投票率36.5%ということで、関心の低さもあるんでしょうか、投票率の低さが気になりますよね」
伊佐治局長
「20年くらい前ですが、あるベテラン議員が『投票率なんて上がらなくていい。投票に必ず行く高齢の支持層を固めれば選挙は勝てる』と話していたのを覚えています。政治に関心がないからといって投票に行かないと、政党も候補者も若い世代を相手にしなくなってしまいます。実現してほしい政策があるのかどうか、しっかり政党、候補者を見極めて、まずは選挙に参加して、一票を投じることが大事だと思います」
鈴江キャスター
「なかなか全ての政策を支持できる候補者や政党をみつけるのは難しいところではありますよね」
森キャスター
「自分が関心があるトピック1つでも、この政党と言っていることが同じだな、自分の気持ちが乗っているなというところに1票を投じる選挙の仕方でもいいのかもしれませんね」
鈴江キャスター
「一人ひとりの暮らしに関わる大事な選択。1票を投じてください」
(2024年10月25日放送「news every.」より)
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